自分で決める人~引退もコーチ就任も…ソフトボールを捨てない人の生き方・働き方 その2

〈前回までのインタビューはこちら〉
自分で決める人~引退もコーチ就任も…ソフトボールを捨てない人の生き方・働き方 その1

現役を引退した翌年、地元福岡県で働いていた山田さんに、突然フランスのナショナルチームへのコーチ要請の声が掛かりました。
初の海外での指導。異なる価値観や言葉の壁が山田さんの前に立ちはだかります。山田さんは「正解のカギ」をもって指導にあたっていきました。
さて、その内容はどんなものだったのでしょうか。

(本記事はrolesに取材いただきました)

セイノーグループで働いてたら、2週間後、フランスでソフトボールのコーチをすることになった

今國(以下 今):(フランスのナショナルチームへの)コーチ派遣の話があったのは、いつ頃だったんですか。

山田(以下 山):派遣される二週間ほど前です。

今:えっ、かなりギリギリ。

山:はい、ギリギリです。

今:連絡が来て、会社に話をしたとき、上司の方はどんな反応でしたか。

山:課長に話をしたところ「チャンスだし、めったに行けることじゃないから行っておいで」と言っていただけて、その後課長が社長に話をしてくださって、OKをもらいました。

今:すごい。理解がありますね。山田さんは、承諾していただけると思いましたか。

山:はい(笑)。会社の後押しもありましたし、私自身も、国際経験がないのにお話をいただけたので、経験値を高めるためにも行ってみようと決断しました。

今:今回のコーチ派遣には、どんな目的があったんでしょうか。

山:ソフトボールは、オリンピック種目から一度除外となりましたが、今回東京オリンピックから正式種目として復活します。だけど、次回のオリンピック開催地パリを含め、ヨーロッパはソフトボールが盛んではありません。

パリオリンピックでソフトボール競技がまた除外となると、再度正式種目として復活させるのが大変なので、パリでも正式種目として継続させたい。そのためには地元のフランスチームも強化しないとフランスから評価を得られにくくなる、ひいては除外となる可能性が出てくるんです。

なので、継続させるための動きの一つとして、日本が指導者派遣してバックアップしていきましょうというもので

今:そういった背景があったんですね。日本はソフトボール強豪国ですよね。

山:そうなんです。そうした目的もあって、今回のコーチ派遣は長期で行かなくてはいけなかったので、行ける人も限られていたと思います。

今:どこの会社も「行ってきていいよ」って二つ返事で送ってくれる会社というわけではないですしね。

山:はい。ほんとうにそう思います。

今:先ほど、今回の派遣について、会社は承諾してくれると思いますかとお伺いした際、「はい」と即答されたということは、西濃運輸自体にそうした文化があるんですね。

山:そうです。私が当時現役だったということもありますが、色々と融通を利かせていただいていたし、スポーツに対してほんとうに理解のある会社です。

異なる価値観と言葉の壁が立ちはだかる

今:フランスではどういった方たちに指導をされたんですか。

山:10代から20代前半のジュニア世代に対して、ピッチング指導をしました。

今:海外での指導は初めてということでしたが、今回指導されてみてどうでしたか。

山:第一回目の時は、フランスがどういうレベルかとか、どういう練習方法なのかとか、全くわからない状態で行ったのですが、一言で言うとカルチャーショックでした。

今:どういった点をカルチャーショックに感じたのでしょうか。

山:まず、練習の時間が短いです。日本って練習時間が長いんです。それこそ朝から晩まで練習します。フランスは、休むことがすごく大事という文化です。日曜日は絶対に仕事は休みだし、家族サービスを大事にしている。そういう文化の違いにびっくりしました。6週間練習してからの2週間は休むというリズムがあるらしいんですね。

今:休暇もしっかり入れながら進めるスタイルなんですね。しかも、練習期間中も、練習時間は限られている。

山:はい。その日は学校もなく特に用事はないという日でも、午前午後どちらかは休ませます

今:日本人である山田さんからしてみたらカルチャーショックですよね。

山:カルチャーショックですよ。「休んでも勝てるんだ」って思いました。

今:確かに、フランスは決してスポーツが弱いわけじゃないですもんね。

山:そうなんです。サッカーとか強いじゃないですか。だからびっくりしました。あとは言葉ですね。フランス語でも苦労しました。

私の指導は「これはこう」というような指導スタイルではないんです。その人の元々のスタイルは崩したくないから、本人の意見も聞きながら調整していきたい。会話しながら、「じゃあ次はこうやってみようか」っていう、やり方なんですね。「今のどう?」「感覚はどんな感じ?」こんな風にコミュニケーションをとりながらやるタイプなので、特に最初の頃は凄い大変でした。通訳さんを通しながらそうやってやらないといけなかったので。

フランスの選手は最初の頃はコミュニケーションを取らなかったんです。例えば、キャッチャーとピッチャーのコミュニケーションもありませんでした。

今:それでどうやって通じ合ってるんですか。

山:うーん。キャッチャーは受けるだけ。ピッチャーは投げるだけ。今のボールこうだったよ、っていうやり取りもない。二人の感覚が合わないと意味がないのに、そこのコミュニケーションがないんです。人が投げているところも全く見ない。一方で、自分への興味が強い

今:個人技が強い国って、そういった傾向があるのかも知れませんね。逆に日本人は和の人たちだから合わせる。

山:そうなんです。日本人は合わせるんです。だけど、逆に一人だったら何もできないところもある(笑)。

今:そこはやはり国民性は出ますよね。

山:出ます出ます。すごく出ます。

next : 言葉が通じなくても伝わっていた「正解のイメージ」カギはコミュニケーション

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