言葉が通じなくても伝わっていた「正解のイメージ」カギはコミュニケーション

フランスでの指導の様子

今:一回目の派遣時はカルチャーショックもあって、明確な課題も見えた。二回目の派遣時はどんな感想を抱かれましたか。

山:実は、一回目の(派遣期間の)終わり頃には、なんとなく私の伝えたいことをわかってもらえた感覚があったんです。

まず、今回行ってみたら、自分たちでどんどんどんどん練習を進めていました。私に対してもどんどんコミュニケーションを取ってくるし、ピッチャーとキャッチャー二人でコミュニケーションをとりながら練習をやっているんですよ。「すごく良くなってる」って思いました。もちろん、投げるボールも良くなっている。そして、キャッチャーもそれを理解しているんです。

キャッチャーとピッチャーがコミュニケーションを取るようになって、全体的にすごく良くなった。というのが今回の印象です。

今:それは、前はなかった光景だったんですね。

山:はい、前は全然なかったです。あと、今回、一緒に派遣された野手のコーチが初めて派遣されたということもあって、通訳の方が野手の(コーチの)方にずっとついていたんです。なので、私は通訳さんなしでほぼ指導をしていたのですが、それでも、なんとなく私の言いたいことが選手に伝わっていて。向こうも、私が言いたいことがわかってきているし、「どう?」って聞いたらジェスチャーとか片言の英語でこうだよって言ってくれて、こっちもそうだねって答えて。私とのコミュニケーションも前回よりも合ってきている。選手同士も、選手と私も、コミュニケーションができてきました。コミュニケーションの面は、全体的にとても良かったなあって思います。

今:とても良い変化が出てきていたんですね。フランスの選手たちは、今回、新しいやり方を与えられて覚えたことで、これからすごく伸びる可能性がありますね。

山:そうなんです。私が伝えたことも引き出しのうちの一つになったかなと思いますし。動画を見てイメージを入れてもいい。とにかく、考えること、そして上手い人の真似をしていくことが大事なんです。それなしには絶対に上手くなりません。そのきっかけが今回投じられたのかなって思っています。

今:型を知らない人が型に出会うことは、凄いことだと思います。

山:フランス自体が、まだまだレベルが高くはないということもあって、そもそも彼女たちの中に“正解”のイメージがきちんとなかったんです。実際に私が投げて見せて「やって見せた」ことも今回大きかったと思いますね。口だけじゃなくて、実際に投げて、こうだよああだよって言った方が効果はありますし、見ないことにはイメージもできませんから。

今:正解を見ないことには、どこを目指したらいいのか具体的にイメージが持てませんよね。お伺いしていると、二回目の派遣時は、一回目の派遣時に山田さんが蒔いた種が芽吹いたような印象を受けました。

山:ありがとうございます。今回は前回に比べて、困ったことよりも嬉しかったことの方が多かったんです。中でも、コミュニケーションが取れてきたことが一番嬉しかった。前回は、私が選手たちに伝えるばかりだったのですが、今回は、向こうから話しかけてきたり、質問をしてくるようになってきた。信頼してもらえてきたのかな、と思いました

〈次回に続きます!〉
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